
第2話 何やってんだ?
「うーん、何番借りる?」
「え……何番って?」
クラブに番号があるのか?(知らんがな…そんな事)と、私は心の中で呟く。
(やった事もないんだから!クラブを触った事もない私に聞くな!)
心の中だと、言いたい事を言えるのにそれは決して声にはならない。私が黙っていると木下さんは受付に向かった。
「じゃ、レディースの七番で」
(レディース?何だ?それ、私はそんなところには入ってないぞ…)
「じゃ、行こう!」(行かない~~~!)
とは言えず、私はそのまま木下さんの後ろを歩く。
「じゃ、打ってみようか?」
「え…?」
無理だろう!いくら何でも、クラブ持った事もないんだぞ、そこのところ分かって言ってるのか?と声にはならない反論をまたしても試みる私。
「兎に角、振ってみて」
「はあ……」
何だかよく分からないが、渡されたクラブを持ってみる。
「あ、そうか!まずはクラブの持ち方からだね!」
(決まりがあるのか?)
「こうして、まず左手で握って、親指以外の指の付け根がクラブに当たるようにね」
私は見様見真似で木下さんの言う通りにクラブを握る。
「じゃ、打ってみよう」
「は?」
「まあ、最初は素振りからとか色々言う人もいるけど、まずは打ってみないとね。当たると面白くなるから。とはいえ、俺もまだたった一年の初心者に近いレベルだから教えられるほどの腕もないけどね。兎に角、思い切り振ってみて」
私は言われた通り、クラブを上から打ち下ろすように振った。するとクラブに当たった球が前に飛んだ。
「お、当たった!」
当たったって、そりゃ当たるだろ、止まってる球を打つだけじゃないか。この時、私はそう思った。
「じゃ、そのまま適当に打っていて。俺は前のボックスで練習してるから」(はあ~?そんな無責任な!)
と思うが、帰るに帰れず私はそのまま出てくる球を打ち続けた。取り敢えずは当たる、どれだけ飛んでるかというのはさっぱり分かってないが、当たれば良いんだというくらいの認識である。(私、何やってるんだ…)
なんでこんなところで興味すらないゴルフの練習をしているのか正直自分でも分かってないのだが、これも成り行き、しかし一体、どれだけ打てば良いんだろう。私はただひたすらクラブを振って球を打ち続けた。結構疲れる、でも止まって良いのかどうかも分からない。
「島村さん…島村さん!」
「あ、え…はい」
「あの、ちょっとは休憩とらないと…」
「へ…」
休憩して良いのか?それならそうと言ってくれ。
「ブッ!」
息を切らして顔を上げた私を見て木下さんが噴出した。
「な、何ですか?」
「いや、髪振り乱して凄い形相だなって思って。まるでボールに恨みでもあるみたいだ」
「は?」(お前が適当に打ってって言ったんじゃないか!)
「あ、ごめんごめん。いや~でも一応、当たってるから筋は良いのかも」
「一応…?」
一応って何だ?当たりゃ良いんじゃないのか?
「何か飲む?ジュースでも奢るよ」
「あ、はい…じゃ、ミルクティーで」
「ミルクティー?分かった」
そう言いながら木下さんは自販機で自分の飲み物とミルクティーを買って私に差し出した。
「ありがとうございます」
「どう?ゴルフやってみる気になった?」
「いえ…特には……」
だいたい、なんで自分が今打ちっぱなしにいるのかも不思議に思っている。
「そっか…ま、無理にとは言わないけどやれば楽しいと思うんだけどなあ」
「はあ…」
「じゃ、俺はもう少し練習するから島村さん、適当に帰って良いよ。あ。そう言えばグローブもないしね、あんまりやり過ぎると掌の皮むけるよ」(グローブ…って何だ?)
頭に浮かんだのは野球のグローブ、だがそんなわけはないだろう。そう思って木下さんの手を見ると左手だけ手袋をしていた。(ああ、あれの事か…)
「はい…あ、そうだ、入る時、お金払ってましたよね?あれって私の分も払ってもらったのじゃ…」
「あ、うん。でも今日の分は良いよ、なんか無理やり引きずり込んだ感じもしなくもないし(笑)」
(何だ、分かってたのか)
そのまま私は暫く、木下さんが打つのを見ていた。凄い飛んでる、向こうの網まで軽く届いてる。私はもう一度クラブを握って打ってみる。私の打った球はすぐそこまでしか飛んでない、なんでこんなに差があるのだろう。クラブか?それとも男と女だから、力に差があるのだろうか?そんな疑問が沸いた。
その後、何度振ってもどれだけ当たっても、私の球は遠くまで飛ぶ事はなかった。私は諦めて帰る事にした、木下さんに声を掛けようとしたが、一生懸命練習してるみたいなので黙って帰った。家に帰った私は何となくPCを開いて、ゴルフボールを飛ばすには、と入れてみた。すると色んなサイトが出てきた。
・飛距離を出す方法
・飛距離が断然違うゴルフボール
・飛ぶクラブ
等々、色々だ。クラブやボールでも変わるのか?じゃ、初心者でも良いボールと良いクラブを使えば飛ぶという事なのだろうか。なんて事を思いながら、ゴルフ初心者向きのサイトを開く。まずはクラブの握り方から説明が書かれてあった。私は適当な棒を持って書いてある通りに握ってみる。(こう、かな?)
そのままクラブを持ったつもりで振ってみる。何だか飛びそうな気がしてくる。(そうよ、飛ばなかったのは知らなかったからよ!)そのまま、私はそのサイトを読む。するとボールに対しての自分の立ち位置、打つときの姿勢とかも掛かれてあった。ボールを打つときの姿勢をどうやらアドレスというらしい。(ふーん、アドレスって言うのか)
そのまま書いてある通りに色々試してみてハッと思った。(何やってんだ?私)
ゴルフなんて全然やる気ないくせに、と思ったところでベッドに横になった。(ばっかみたい)
そう思ったが、何だかモヤモヤしてる。この感情は何なのだろう…。
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クラブの握り方も知らない初心者ゴルファー佳奈美の前に現れた中年男性。いきなり佳奈美にゴルフの指導を始める!!この中年男性の正体とは?果たして佳奈美は上達するのだろうか。佳奈美の初めて始めてゴルフ第三話。
第一話はこちら
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ゴルフ歴5年(唯一の趣味)楽しくをモットーにゴルフをしています。まだまだ知らない事が多いですが日々精進?しています。