佳奈美の初めて始めてゴルフ〈入門〉「知らんがな、そんな事」第3話

第3話 何故かレッスンへ…

翌日の日曜、私は再度打ちっぱなしに赴いた。何故向かったのか自分でも不思議だったのだが、昨夜、PCで読んだ事を実践すれば、昨日よりもっと飛ぶ気がしたのだ。それをどうしても試したくなった。

ところが、だ!昨日書かれていた通りに実践したつもりなのに、今度は当たらなくなった!なんと空振り三振!どころではない、振っても振っても当たらない!何だ、あれは?折角、読んでやったのに!などという、当たりどころのない怒りが込み上げてくる。

よ!これじゃあんなの見る前の方がましじゃない!)

私の空振り様を見て、周りのみんなが笑っているような気がする。そう思うと顔を上げるのも恥ずかしくなった。

「ちょっと、君」

声を掛けられて振り返ると見知らぬオッサン。

(誰だ…?)

「ゴルフ初めて?」

「あ…はい…」

「だろうね、あれじゃ駄目だよ。むやみに振ったって当たるわけもない」

(でも昨日は当たったのよ!)

という声が喉まで出かかる。

「じゃ、クラブを持つところから始めようか?」

「え?」

「ほらほら、早く!」

「あ、はい」

何で?という心の声とは裏腹に断れない私は言われるままにクラブを握る。

「あ~ダメダメ。もっとしっかり握って。それから右手は添える程度ね、左手片手で振るイメージで」

(何でよ?私右利きだよ。当然右腕の方が力あるじゃん!)

「それから打つとき、体が伸びあがってるから、あれじゃ球に当たらないよ、両足はしっかり床につけて腰を落として、腕で振らないで、体を捻って遠心力で打つ感じ」

(???)

さっぱり分からない。正に知らんがな、そんな事、って感じだ。

「ほら、こうやって腰を後ろに回す感じ」

見知らぬっオッサンが腰を回して見せる。

「ほらほら、真似してみて」

「はい…」

(何なの~誰なの、このオッサン。知らないんだけど~)

と思うものの、言われるままクラブを振ってみる。

「そうそう、そのまま素振り十回ね」

「は?」

(何であんたに命令されなきゃいけないのよ)

と、思いつつも私はその言葉に従って素振りを十回。つくづく反論できない自分の性格が恨めしい。

「じゃ、そのまま同じ姿勢でボール打ってみて」

「はい」

そして打ってみると、明らかに昨日より飛んだ!

(嘘!)

「ほうら、当たった!その調子で何度か打ってみて!」

「はい!」

球が高く飛んだ事ですっかり気を良くした私。我ながら単純だとは思うけど何だか気分が良い。とはいえ、そのまま全部が全部当たったわけではないが、昨日は全然空振りしなかったのに、今日はやたらと空振りをしてしまう、でも当たれば昨日よりは確実に飛んでいる。

(何だ、簡単じゃん)

などと思ってしまった私。知らないという事は何よりの強みだ。

「君、中々筋が良いよ。このままちゃんと練習すればすぐに上手くなれるよ」

「え?本当ですか?」

この言葉ですっかり調子に乗ってしまった私。既にやりたくなっている私がいる。

「私はここでゴルフを教えてるんだ」

「え?先生なんですか?」

「そう、毎週水曜日なら無料レッスンがあるよ。受けてみる?」

「はい!」

(え?今私はいって言ってしまった?)

勢いづいて返事してしまった自分に自分で驚いている私。

「あ、あのでも私、クラブも何も持ってないんですけど…」

「最初のうちはレンタルで良いんじゃないか。続けられそうなら買えば良いし」

「でも、ゴルフクラブって高いですよね…」

ゴルフは贅沢なスポーツ、そういうイメージが断然ある。

「どんなスポーツだって道具はただじゃない。ゴルフだけ高いわけじゃ無い。それにビギナーズラックならセットで安い物も今は色々売ってるよ」

「でも、どうせなら高い物の方が良いんですよね?だって、ボールクラブで飛距離って変わるんですよね?」

「まあ、それも一理あるが、どんな良い道具持っていても、腕が伴わないと宝の持ち腐れにしかならないよ」

(それって私が高いクラブ持っても意味がないって事?)

何だか凄く見下されている気がした。

「ま、弘法筆を選ばずっていう言葉もあるしな」

私の心の中を見透かしたかのようにオッサンはそう付け足した。

「はあ…」

「じゃあ、水曜日待ってるよ」

「あ、あの時間は?仕事終わってからでも大丈夫でですか?」

「二十一時までいるよ」

「分かりました、予約とかとらないで良いんですか?」

「無料レッスンだからね、特にその必要はないよ」

 

と、約束したものの、正直迷っていた。本気でゴルフを始める気があるのか?と自分に聞いてみてもよく分からないのだ。

 ただ、今日、ボールが飛んだ時、凄く気分が上がった。もう何年もあんな風な気持ちになった事はない。あれがずっと続けばなんだか楽しいような気がしたのだ。

 迷っているうちに水曜日になった。どうしようかと思った。

(でも、約束したしなあ…)

この間の人の良さそうなオッサンの顔が浮かぶ。

(やっぱり、待っていたら悪いよなあ…)

そんな風に思った私の足は自然と練習場に向かった。

「やあ、来た来た!」

意外にも私の他にレッスンを受けている人が何人かいた。

「じゃ、改めまして米田です。米田尚文と申します」

「あ、私は島村佳奈美です。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく。じゃ、早速、レッスンをしますか」

「あ、あの、クラブは何を借りればいいですか?」

「そうだねえ、取り敢えず、七番アイアンとドライバーで行きますか」

ドライバー?」

「ラウンド出るとね、一番初めに打つクラブですよ。これが飛ぶとゴルフが楽しくなる」

「分かりました!借りてきます」

こうして何故か私のゴルフレッスンが始まった。

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