佳奈美の初めて始めてゴルフ〈入門〉「知らんがな、そんな事」第4話

第4話 買っちゃった…

 

 まさか自分がゴルフを始めるなんて、一週間前には微塵も思っていなかった。

なのに無料とはいえ、レッスンに行ってる自分がいるなんてなんだか不思議だ。

 それにレッスンは無料とはいえ、練習場を使うのは無料ではない。料金制度は打ちっぱなしによって変わるようだ。入場料を取るところもあれば、ボール代だけのところもある。そのボール代にも結構ばらつきがあるという事を最近知った。

 まあ自分で調べたのだが。今は最初に行った、会社と家のちょうど中間近くにある打ちっぱなしに行ってるがもっとうちから近い便利なところがないのかとネットで探してみて、料金が一律ではない事を知った。千円でボール何球とか、何球分幾らみたいなカードを買って好きなだけ打って、残った分はまた次に使えるみたいなところと、二時間打ち放題で幾らとかいうところもあったりした。何が得なのかは自分の練習の仕方次第だろうと思う。ボールの値段は一球六円くらいのところもあれば、その倍するところもあって、それも決まってない。

 要するに、無料とはいえ、全く無料でできるという事ではない、でも取り敢えず今は、この無料レッスンを暫く受けてみるつもりでいる私がいる。有料レッスンもあるようだ。無料レッスンは指定された時間に行けば誰でも受けられる、まあワンポイントレッスンのようなものだ。有料レッスンは、三十分だがマンツーマンで付きっ切りで教えてくれるらしい。多分、そっちの方が速く上手くなれるとは思うが、目下のところ、そこまでお金を出す気もない。続けると決めたわけでもないのだから。

 などと思いながらも、最近家に帰ってはパソコンでゴルフショップのサイトばかり見ている私がいる。見て吃驚だ。本当にピンキリ、一本何十万もするクラブがあるかと思えばセットで数万くらいのもある。

「どんな良いクラブ持っていても腕が伴わないとね」

そう言った、米田先生の言葉が胸を過る。行く度にレンタルするのがなんだかなあと思い始めてるのだ。改めて周りを見回すとみんな自分のクラブをちゃんと持って来ている。でもあんな大きな荷物持って電車になんて乗れない、買ったらどうやってあれを持って通えば良いのだ?という新たな疑問が沸く。そう言えばみんな車で来ていた。

 私も車の免許は持っている。高校を卒業してすぐに取った。でも、肝心の車はない。買ったところでうちの車庫には父の車が居座っている。だから置き場所もない、それに特に必要もないのだ。という事で、現在私は免許を取ったきりのペーパードライバーだ。だからすぐ運転も出来ない、というのが現実。

「う~~~っ!」

私は思わず頭を抱えて呻いた。

(でも…欲しい)

そんな思いが私を支配する。物が欲しいと思ったのも正直久しぶりだ、ブランド物は勿論、ファッションにも殆ど興味がない。洋服は奇抜でなく着られればなんでも良いとさえ思っているくらいだ。

 そんな事を思いながらも、私はサイトを見続けて、ふと目が留まった。

・レディースゴルフクラブ八本セット、キャディバッグ付き 送料税込み三万九千八百円

(八本?八本って多いのか?少ないのか?普通、何本使うんだろう…?あ~知らんがなぁ~)

・ドライバー、フェアウェイ。ユーテリィテイー カバー付き

・アイアン 7,9、PW,SW、パター

・キャディーバッグキャスター付き

(???さっぱり分からない、これで良いのか?でも三万九千八百円なら…)

と思ったところで、思わず購入ボタンを押してしまった私

(え…?)

「え~~~!?」

思わず声が出た。

(買っちゃった私…?)

画面を見ると「ご購入ありがとうございます!」なんて画面が出ていた。

(買っちゃったんだ~~!)

 

 そして三日後、会社から帰ると、大きな箱が二箱、玄関入ったところにデデーンと置かれていた。

「あ、佳奈美、お帰り!いったい何買ったの?こんな大きな箱が届いてお母さん、吃驚したわ。あんたが買い物するなんて随分と珍しいわね!」

「あ、うん、ちょっと…」

私がその箱を部屋に運ぼうとしていたら、運悪く父が帰ってきた。

(ゲッ、お父さん!)

「ただいま、お、何だ、その箱?」

「な、何でもない!」

「佳奈美が買ったのよ、何かしらね」

「お母さん、余計な事言わなくていいから」

「へ~、ほう?成程!ゴルフセットか!」

箱を見ながら父がそう言った。

(な、何で…?)

「箱にゴルフショップって書いてあるじゃないか、その大きさだとキャディバッグクラブだろ?何だ、お前、ゴルフ始めたのか?」

「べ、別にそういうわけじゃ…」

「何言ってるんだ、やりもしない物買わないだろ?どんなの買ったんだ?」

「い、良いじゃない、何だって!」

「そう言わず見せてみろ、ほら、開けてみよう」

そう言うと父は箱を抱えてリビング入って行った。私ももう一つの箱を持って追いかける。すると父はすでに開け始めている。

「お父さん!勝手に開けないでよ!」

「なんで?どうせ開けるんだろ?」

「そうだけど……」

とは言いながら、どこかワクワクしている私。私のゴルフバッグ!そう思うだけで何だか気分が弾む。そして中から顔を出した赤いキャディバッグ

(可愛い!)

もう一つの箱を開けるとそこにはクラブが入っていた。どれもキラキラして見える。

「まあ、良いんじゃないのか。でも何で言わなかったんだ?言えば父さんが、もっと良い物買ってやったのに」

「良いの!私はこれで。ずっと続けるかどうかも分からないんだから!」

などと言いながらキャディバッククラブを入れてみると、益々嬉しくなっている自分がいた。

「じゃあ、ちょっと、行ってみるか?」

「へ?」

「打ちっぱなしだよ」

「え?今から?」

「まだ七時前だぞ。十分、時間あるじゃないか。待ってろ、父さん着替えてくるから」

「え?ほ、本気なの?」

「勿論、佳奈美と打ちっぱなしに行くなんてな!」

そう言っている父の顔はどこか嬉しそうで、嫌と言うのも何だか悪い気がした。それにちょっと、行きたいと思っている私がいる。

「本当に行くの?もうじき晩御飯出来るわよ」

着替えてきた父に母が少し不満げに話掛ける。でもその時には私も既に着替え終わっていて行く気満々。

「まあまあ、小一時間くらいで帰ってくるから」

そう言うと、父は私のキャディバッグを担いで外に出た。父のキャディバッグはガレージに置きっぱなしだ。

 そうしてそのまま、私は父と二人で打ちっぱなしへ。どうせ行くのならと私はこの間から行ってるところに連れて行ってもらった。

「そこにはもう何回くらい行ってるんだ?」

「四回、かな?」

「そうか。でもお前がゴルフをするとはな」

「まだするかどうか分からないよ」

「折角、クラブ買ったのに?」

「そう、だけど…」

(ホントに…買っちゃったんだよなあ……)

 

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