佳奈美の初めて始めてゴルフ〈入門〉「知らんがな、そんな事」第7話

第7話 初めてのラウンド

「ほら、あのドライバー打つ位置、ティーイングエリアっていうんだけど、そこに青とか白とかの杭が打ってあるだろ?」

「はい」

「あれがボールを打つ位置なんだ。黒が一番後ろで、基本的にはプロが打つ場所。その次が青で、まあ、アマチュアクラスかな。俺達でも打たしてもらえる。でもまあ、一般的には男性は白からで、女性は赤い杭が打ってある所から打つんだ」

「あの金色の杭は何ですか?」

「ああ、あれはシニアクラスの打つ場所、だいたい六十五歳以上なのかな、なんか明確な定義はないようだけど」

白色のティー レギュラーティー

・赤色のティー レディースティ

・シルバー(ゴールド)ティー シニアティー

・青色のティー バックティー

・黒色のティー フルバックティー

・黄色のティー 特設ティー

(ふーん、あれをティーって言うのか)

「じゃ、私はあのちょっと前にある、赤いティーのところから打つんですね」

「そういう事、ティーが右と左に分かれて二つあるだろ?それを線で結んで、その間に自分のティーを刺して、そこにボールを置いて打つ。このとき気を付けなくてはいけないのが、そのティーとティーとを結んだ線より、前から打っちゃいけないんだ。後ろはどれだけ後ろでも良いんだけどね」

「へえ~、そうなんですか」

なんて話してる間に、部長がティーイングエリアに立った。

「前の組が自分の打った球が絶対に届きそうにないところまで進んだら、打っても良いんだよ。逆に早く打ったら危ないからね、ゴルフボールって結構固いし、勢いもあるから当たると大怪我どころで済まない事故も起きたりするから」

「分かりました」

 

「じゃ、今日はよろしく頼むよ」

「こちらこそ、宜しくお願いします」

部長と木下さんが声を掛け合っていた。

(へえ~打つ前に挨拶するのか。さすがマナーのスポーツ!)

「あの、一球打つ度に挨拶するんですか?」

「いや、そこまでしないよ。まあ、朝のラウンド始める時と、午後のラウンド始める時の二回位かな」

「そうなんですね!」

そうして部長と木下さんが最初の一打を打ち、いよいよ私の番になった。

(ダメだ…心臓が波打ってる!)

ドキドキが半端ない、こんなにドキドキしたのなんて人生で初めてではないかと思えるくらいだ。部長と木下さんの視線がジッとこっちを見ているのを感じて更に緊張してしまう。練習を思い出せば良いんだ、と自分に言い聞かせる。最近では結構当たるようになってきていた、同じように打てば良いだけだ。そう思って私はクラブを振りおろした。

スコンッ!

何か、変な音がした。でも取り敢えず当たった!とはいえ、多分五十Yも飛んでいないだろうと思われる。ゴルフの距離はヤードで表すという事もレッスンをするようになってから知った。一Yはだいたい〇.九メートルという事だから、五十メートルも飛んでないという事だ、とはいえ、練習でもいつもこんなものだ。だいたい、どんなクラブで打っても同じくらいしか飛ばないのだから。

「まあ、前に進んだから良しとしよう」

部長の言葉に私は少しホッとした。

「ほら、次のクラブを持って、ボールのところまで走る!」

でも続け様に部長にそう言われ私は慌ててカートの後ろに回る。

(え?走るのか?次って、何を、どれを持てばいいんだ?)

私がカートの後ろでモタモタしてると木下さんが近づいてきて、クラブを一本取り出した。

「今日はこれでずっと打つと良いよ。色々使ってもややこしくなるだけだから」

「あ、はい」

差し出されたのは七番アイアン。

(これで良いのか?ま、良いや、よく分かんないし)

取り敢えず、ボールが落ちた位置に走る。ボールはすぐに見つかったが、何だか足元が悪い、斜めになってる。こんなところから打つのか?確か動かしたらダメとか書いてあったしな…。私はボールの前に立って、手にしているクラブを振り下ろす。クラブボールにはかすりもしないで、その手前の地面を掘り起こした。

(え~~~⁈)

三回、五回、同じ事を繰り返して、ようやく当たった。部長や木下さんはカートに乗って、もうとっくに前に行っている。

「急がなくて良いからね!」

木下さんが前からそう言ってくれてる声が聞こえたが、そういうわけには行かないだろうと気持ちは焦るばかり。二人に追いつくまでに何回クラブを振ったやら。

(え?何回?)

確か、自分の打った数を数えてと言っていた。

(え…っと、ボールに当たった数だけだから…前に進んだ数という事は…そっか、五回だ)

「空振りまで数えていたら数えきれないから」そう言われた木下さんの言葉が蘇る。確かに、空振りした数など全く覚えていない。

 そうして、やっとの事でグリーンに辿り着いた。

(やっぱり、まだラウンドに出るなんて無理だったんだ…)

そう思いながら、チラッと部長と木下さんを見る。でも二人共、怒っている様子はない。部長は普段は厳しい人だ、絶対切れられると思ったがそんな感じではなかった。

「あ、あの、すみません」

「ん?何が?」

「時間かかちゃって…」

「な~に、初めてなんてそんなもんさ」

(へ~意外)

何だか部長の違う顔を見たような気がした。

「ここで、マークしてボールを一度拾い上げるんだよ」

そしてまたここでも木下さんが説明をしてくれる。

「マーク?」

「あ、持ってない?じゃ、これ、ゴルフ場のだから、この押しピンみたいなのをボールが落ちているところに刺してボールを拾うんだ。あ、ボールの後ろ側に刺すんだよ」

「はい」

しかしここでもまた何度も行ったり来たりして、やっとの事で球をカップに入れた。一ホールがこんなに長いとは、と思ったくらいだ。

「島村さん、何回打ったか覚えてる?」

「あ…えっと……」

(何回だっけ…)

もう全然、分からなくなってる。九回目くらいまでは覚えてる。あれから三回くらい打って、グリーンの上で五回くらい打ったかな。

「あ、えっと、多分十七回くらいかと…」

「十七ね、木下君は?」

「僕は六です、ダボでした」

「私は五回で、ボギーと」

(ダボって、何だ?ボギー?)

さっぱり分からない。

(あ~、もう知らんがな~~~)

せめてもう少し、勉強してからくるんだった、と思ったが時すでに遅し。あと十七ホール、道のりは途方もなく長く思えた。

 

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