佳奈美の初めて始めてゴルフ〈基礎〉「知らんがな、そんな事」第11話

第11話 アドレス

「ほう、初ラウンドに行ってきましたか。どうでした?」

「もうワチャワチャでした。知らない事多すぎて…ボールも全然、飛ばないし、思った方向には行かないし、ここで練習してるときはもう少しましだと思ったのに」

「そうですか、嫌になりました?」

「なりましたぁ、自分が出来なさすぎて…」

「楽しくはなかったですか?楽しむゆとりなんてなかったですかね?」

「それが…結構楽しかったんです!」

ステーキのお陰かも、とは口に出さなかった。

「それは良かった。ゴルフが上手くなる一番の秘訣は楽しむ事ですよ」

「ホントですか~」

「本当です」

そう答えると米田さんは何だか意味ありげな顔をして私を見た。

「な、何ですか?」

「島村さん、なんか表情が変わりましたね」

「え?そうですか?」

「ええ、良い感じです」

「はあ…」

(何が良い感じなんだろう?)

「あの、先生、私、有料レッスン受けようと思うんですけど…」

「あ、初ランド行ってやる気になりましたか?」

「やる気って言うか…もう少しましになりたいなあって」

「分かりました、一緒に頑張りましょう」

「ありがとうございます!宜しくお願いします」

「今まではワンポイントレッスンでしたが、これからは基礎からきちんとやり直しましょう」

「あ、はい」

「分からない事はその都度聞いて下さい、後回しにしたら、聞きたい事って忘れてしまいますから」

「分かりました」

そうして私は有料レッスンを受ける事にした。やっぱり上手くなりたいと思ってしまったのはラウンドに行ったせいだろう。

「思った方向に飛ばないって言ってましたね」

「はい」

「じゃ、ちょっと打ってみましょう。どの方角に打つか決めたら、いつも通り打ってみて」

私は先生に言われた通り、ボールにクラブを合わせて、取り敢えず真っすぐ飛ぶようにマットと並行に立って先生に打つ方向を言ってからクラブを振った。でもボールは真っすぐ飛ばず、左側に飛んで行った。

「うん、なるほどね。今、マットと体の向きを平行にしたね?」

「はい、その方が分かり易いと思って」

「ここではね、でも実際にティグラウンドに行った時、マットはないよね?それにグリーンの方向が真っすぐ前方にあるとも限らない。じゃ、どうする?」

「あ…えっと…」

「ちょっと、こっちに来て、ボールのこっち側。ほら例えば、あの五十と書いてある札の方向に打つ場合ね。こちらからクラブを自分の臍か胸の前で水平に構えてみて」

「こうですか?」

「そうそう、その延長線上に五十Yの看板が来るように。そうそう、頭の中で線を引くんだよ」

「線、ですか?」

「その線を頭に残してボールを打つ位置に立って、今、頭に描いた線と平行に立ってみて。目標に対して体が直角になるように立つんだ」

「はあ…」

私は言われた通り、頭に残した線と平行に体が向くように立ってみる。

「それでクラブを構えて。スタンスの位置と、姿勢は前に教えた通りね」

「はい」

 

〇アドレス

・スタンス(足の位置) 足は肩幅くらいに開く。

・体の向きは目標に対して直角に立つ。

・まず膝は曲げないで、背筋は伸ばしたまま前傾姿勢をとる。

・ややひざを折って体重を踵に乗せる。

・そのまま両手をだらんと下げる。

クラブを構える。

ボールの位置はクラブヘッド一個分、体の内側に寄せた位置より体の垂直前方の延長線上に置く

・右足の位置はクラブが短くなればなるほど内側に、飛距離が長くなれば外側に調整、クラブが振りやすい位置を決める、この時右足は動かさない。

 *但 ドライバーは左足の踵から垂直前方の延長線上にボールが来るようにする

「あとね、さっき何でボールが左に行ったと思う?」

「あ、えっと、体が左向いてました?」

「いや、体は目標に向かってちゃんと直角になってたよ」

「そうなんすか?じゃ…」

「ヘッドだよ」

「ヘッド?」

「クラブヘッドがねボールに対して平行になってなかったんだよ、ちょっと内側向いていた。だから左に飛んでしまったんだ。これが外に開いてるとスライスになる」

「そうなんですね」

(スライス、ボールが右に飛ぶ事ね。うんうん、覚えてる)

などと心の中で頷く私。知っている用語が出ると何となく、ゴルフを知っている気分になってちょっと嬉しくなる。

「じゃ、そのまま姿勢は変えないで上半身を捻ってクラブを上げる。あげた位置で一度止まって」

「はい」

また言われた通りにする。

「あ~ほらね。また頭がクラブと一緒に動いてる。ボールから目を放してるからだよ。ボールを打ち終わるまで視線をボールから離さない、これとても大事な事なんで。頭動くと体も伸びあがってしまう、そうしたらまともに当たらない。まともに当たらないという事は、飛ばないし、思った方向にもいかないっていう事だから」

「分かりました…」

(覚える事が多すぎる~~)

目標に直角に構えて、グリップをしっかり握って、腰を落として、膝を折って…次、何だっけ?

(やっぱ、前途多難だ…)

こんなんで本当に上手くなれるのだろうかと不安がよぎる。でももう始めてしまった、次ラウンドに行くまでにはもう少し上達しますように、なんて私は心の中で祈った。

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