佳奈美の初めて始めてゴルフ〈基礎〉「知らんがな、そんな事」第13話

第13話 第二ラウンド(上)

前回同様、木下さんが迎えに来てくれた。七時に来ると言っていたから六時起き、普段ならまだ寝ている時間、寝起きは決して良い方じゃないのに六時前にはしっかり目覚めた。ゴルフに行けると思うと早起きも苦にならない、不思議なものだ。まるで遠足に行く子供みたいだ、と思った。

 ゴルフ場について着替えを済ませる。この間のウエアよりずっと可愛いと我ながら悦に入る。それにネットで調べたカウンターなる物を買った。グローブに付けて、打つ度に押していくと幾つ打ったか覚えなくても大丈夫という事だ。前回は一ホール終わる度に、幾つ打ったか必至で数えていた。

カートに向かうと木下さんと他の二名が談笑していた。一人は女性だった。てっきり二人共男性だと思っていたから、一瞬え?っと思った。

「あ、島村さん。紹介するよ、この二人は俺の大学の同期、同じサークルに入ってたんだ。ゴルフじゃないけどね。こっちは大輔、加納大輔、それでこっちが」

「松田留美です、宜しくね」

「あ、こちらこそよろしくお願いします。島村佳奈美です、あの、全然下手くそなんですけど…」

「大丈夫、楽しみましょう」

「ありがとうございます」

「若そうだね、幾つ?」

「あ、二十一です」

「若い!ピチピチしてる!良いねえ」

「お前、それセクハラ!」

「あ、ゴメン。今日は頑張ろうね」

「はい、宜しくお願いします」

答えながら、私は再度女性の方を見る。何となくどこかで見たような気がする。

(あ!この間の…)

打ちっぱなしで見た美人だと思った。

(メッチャ飛んでた人だ)

こんな上手そうな人と一緒に回るのか、と一瞬テンションが下がる。

「今日こそは百切りね!」

「お互い頑張ろう」

木下さんと留美さんの会話を聞いて、あんなに飛ばしていてもまだ百切った事ないという事なのかと思う。昨日、百くらいいけるかなどと甘い事を考えていた自分の考えが一瞬で崩れた。

「松田さんはゴルフ歴長いんですか?」

「ううん、まだ三年。全然上達しないのよ」

(あれで?)

「会社の同期の女の子がゴルフしててね、誘われて打ちっぱなしに一緒に行ったのが始まり。それで面白くなって文雄も誘ったの」

(文雄…?あ、木下さんの事か)

そう言えばいつも苗字しか呼んでいなかったので、名前の認識がなかった。

「で、俺も一緒に引き入れられたんだ。だから俺も文雄もまだ始めて一年ちょっと、佳奈美ちゃんと大して変わらないから気楽に行こうね」

(変わらない事はないと思うけど…)

「じゃ、ちょっとパター練習しておこうか?まだ時間あるし」

「あ、はい」

(えっと、グリーンが右に下がってるとボールが右に転がるから、左寄りに打てば良いんだったな…)

そう思いながら軽く打ったら、思いがけずいきなりカップイン。

「え?上手いじゃない、佳奈美ちゃん」

「あ、さては相当腕上げたな?」

木下さんが本気なのか冗談なのか分からないような口振りでそう言った。

「全然です、ただの偶然っていうか奇跡です」

などと答えながらもやっぱり嬉しい。

 そしていよいよ第二ラウンド。

木下さんも加納さんも軽く二百ydくらい飛んでそうだが、加納さんは左方向にぶっ飛んでOB、

木下さんはバンカー方面にまっしぐら。

「アチャ~、いきなりOBかぁ~」

 

・OB(アウトオブバウンズ) プレーが出来る区域外の事 

 基本的には一打罰で打ち直し。なので次に打つショットが三打目という事になる。公式競技以外では、前進四打のローカルルールでプレーする事もある。

松田さんは、真っすぐ奇麗に飛んだ。

「ナイスショット!」

「さっすが!相変わらず正確なショットだな」

「そんな事ないよ、私も最近右に行っちゃうこと多くって」

何て会話を横耳で聞きながら、アドレスを取る私。

(どうか上手く打てますように!)

最早祈ってる状態。

(えっと、下半身を動かさないようにクラブはゆっくり上げて、顔は球から外さないで、腰を捻って…っと)

頭の中で整理しながらクラブを振り下ろす、がそのクラブは球には当たらず宙を切った。

(え…?)

思いっきり空振りをしてしまった私。

(恥ずかしい~)

「気にしない気しない!もう一回」

「今のは素振りだよ!」

私は顔を上げないままもう一度構え直してクラブを振った。今度は当たった、しかも今まで一番良いショット。とはいえ松田さんの半分くらいしか飛んでないが。

「ナイスショット!」

「ありがとうございます」

「島村さん、前回とは全然違うよ。随分と練習したでしょ?」

「あ、ええ、まあ」

(良かった)

空振りしてしまったが取り敢えず一安心、する間もなく次のショット。ナイスショットと言えど百ydほどしか飛んでないのだから。

(えっと、まだ残り二百yd以上あるから、フェアウエイウッドで良いわけね)

そう思いながらウッドを持って行こうとしたら木下さんに呼び止められた。

「島村さん、そこは結構ラフが深いからウッドだと打ちにくいよ、アイアンも持って行けば?」

(え?そうなの?)

距離ばかり考えていたから、場所によって打つクラブが変わるという認識を持っていなかった。そういえばそんな事を言われたような気もするが、頭の中に残っていなかった。

 言われた通り、アイアンも持って出て七番で打った。一応当たって飛んだが前に進んだ程度、六十ydくらいだろうか。でも一応フェアウエイに乗ったのでそのままボールの位置まで行き、一緒に持っていたフェアウエイウッドで打つ。すると今度は八十ydくらい飛んでくれた。私にとっては快心の当たり。

 (さっきもこっちで打ったらもっと飛んでくれたんじゃないの?)

 などという思いも湧く。

(ん?待てよ、フェアウエイウッドって言うからもしかしてフェアウエイ専用なのだろうか?あ~そこまで調べてない!もう知らんがな~~)

などと私の心の中の葛藤をよそにプレーは進行していく。

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