佳奈美の初めて始めてゴルフ〈基礎〉「知らんがな、そんな事」第15話

第15話 第二ラウンド(下)

 

 ビールを飲んだせいか、テンションが少し上がった。

「午後からも頑張ろうね!」

「はい!」

「あ、あの松田さん、」

「留美でいいわよ、何か松田さんって呼ばれると職場にいるみたいだから」

「あ、はい。私、この間、練習場で、ま、じゃない留美さん見ました」

「え、あ、そうなの?」

「はい、女の人なのに凄いなあって思って見てました」

「留美は中身男だからなあ」

「ちょっと、大輔!」

「アハッ!」

「あ~、佳奈美ちゃん笑うと可愛い!」

(え…か、可愛い…?)

女性に言われても顔が火照ってしまう。

(ん?待てよ…という事は私ってもしかして褒められる事に慣れてないだけ…?)

そう、私は今まで極力人と関わらないようにして生きてきたのだ、だからこんな風に誰かと、ましてや初対面の人と一緒にランチを食べている事さえ考えてみたら不思議な話しだ。

 そうして後半ラウンドが始まった。一打目でいきなりバンカー。

(え…?バンカー?どうしよう…)

前回は負けて貰ってたから、バンカーでは一度も打ってない。

「島村さん、難しそうだったら無理しなくて良いよ。外に出して打てば」

「あ…はい」

木下さんがそう言ってくれてホッとする反面、どこかモヤッとする私がいる。そんな私を見ていた留美さんから一言。

「でも、一回挑戦してみる?」

「え?で、でも、打てるかどうか…私、バンカーで打った事なくて」

「大丈夫、私がついてるから!挑戦しないとずっと打てないままだし」

「はい!」

「なんて言ってる私もバンカーが得意かと言うと全然、そんな事ないんだけどね。でも理論ぐらいは伝えられるから」

「ありがとうございます。お願いします」

ちょっと嬉しくなった。勿論、不安はあるが、出来ない事からずっと逃げるのは何となく嫌だという思いが心の中にあった。でもできない可能性が高いのに、自分からやりたいとも言い出せないでいたのだ。

「じゃ、行きましょう」

初めてバンカーの中で構える私、少し緊張する。

(大丈夫かな…)

「あ、構える時、クラブが砂につかないようにね」

「え?つけたらダメなんですか」

「うん、ソールが砂地に着くとペナルティーになるのよ」

「了解です」

(という事はクラブを浮かして打つって事?ムズカシイ~)

「アプローチ打つときと同じように構えてから、手は右寄りに持って行って、そうするとフェイスが開くでしょ?」

(フェイスが開く…?何だそれは?)

「あ、そうそう、そんな感じ。ボールを打つというより手前の砂にクラブを入れて砂事打ち上げる感じで」

(よく分からないけど…これで良いのか?)

「そのまま、上から思いっきり振り切って!」

言われた通り、振り下ろすと砂もろともボールが高く上がり、バンカーの外に飛び出した。

「ナイスアウト!」

「おおぉ~」

カートから見ていた木下さんと加納さんが拍手をした。

「凄ぉい!佳奈美ちゃん上手い!」

「え、あ、ありがとうございます」

(嬉しい!)

やっぱり褒められると嬉しい。

 

〇バンカーショット(顎の高いガードバンカーの場合)

・まずは普通のアプローチショットと同じように構える

・そのままグリップエンドを右の股関節のあたりに持ってくる(すると自然にフェイスが開く)

・バンカーではボールを直接打たない

・ゴルフボールの手前の砂にクラブヘッドを入れて、砂ごとボールを脱出させる

・脱出で大事なのはボールをダフらせる事

・ボールの手前をダフらせればそれだけで脱出できる

*ダフるためには

・ボールの位置は通常より左に置く事

・ハンドファーストではなくヘッドファーストに構える

・手首を使って構わない、力んで打つ、グリップはしっかり握る

・スタンスは広め、重心位置を下げる、体重は踵

*但し、顎が低いフェアウエイバンカーの場合はトップを意識して打つ

・クラブを一センチ短く握る

・ボール半個分右足よりに置く

・脱出できるクラブで一番飛ぶクラブを持つ

・ハーフトップを打つつもりでスイング

 

そうして第二ラウンド最終ホール

(もう終わりか…)

ちょっと、寂しいと感じてる私がいる。特に上手くなったわけでもないのに、前より楽しくなっている。

最終ホールは二オーバーのダブルボギー、それでも私にはとても嬉しい成績。

結果、後半ハーフ佳奈美 七十一 通算百四十七 木下 五十五 通算百四 加納五十六

通算百五 松田 五十二 通算百二 

「やっぱ結局留美が一番かぁ」

「良かったぁ、何とか死守ね。でも結局誰も百切り出来なかったね」

「やっぱ分厚いなぁ百の壁!」

「確かに!」

(百か、私はいつになったらそこまで行けるんだろう…)

「佳奈美ちゃん、また一緒に行こうね!」

「はい、是非お願いします」

「文雄、ちゃんと送って行くのよ。佳奈美ちゃんが可愛いからって送りオオカミにならないようにね」

「ったく、何言ってんだ?島村さんは後輩だぞ」

「分かってるって、じゃあね」

そう言って加納さんの車に乗り込んだ留美はとても格好よく見えた。

「留美さんって、彼氏が他の女の子送っても気を悪くしたりしないんですか?」

「ああ、あいつはさっぱりしてるからな、そういうタイプじゃない。だから楽なんだ」

(なんだ、それは?惚気か?)

「なんか、女性として憧れます」

「え、そう?島村さんがそう言っていたって言うときっと喜ぶよ。あいつ自分褒められるの大好きだから。でも、島村さん、前とは全然違う、上手くなったよ」

「ホントですか?」

「うん、このままじゃすぐ追いつかれるかも」

「まさか!」

そんなわけはないと思っていても、いつかそんな風になれればいいなと思っている私がいた。

 どうやら、完全にゴルフに嵌まってしまったようだ。

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