佳奈美の初めて始めてゴルフ〈基礎〉「知らんがな、そんな事」第19話

第19話 一年後

ゴルフを始めて一年が過ぎた。予定では百二十以下になってる筈だったが…今、現在の私のスコアは百二十~百三十をウロウロしている。自己ベストは百二十三、これがキャリア二年の女子で良いのか、悪いのか、平均的な数字なのかもよく分からない。

 でも昨年始めた時と比べると雲泥の差だとは思う。そして何より変わったのは周りの環境だ。“友達”と呼べるかどうか分からないが、仲間が出来た。ゴルフ仲間だ。完全インドア派だった私が、外に出るようになったのだから。しかも最初はゆとりがなくて全く見ていなかったが、最近はゴルフ場の景色を見るゆとりも出てきた。まあ、ゆとりなどと言うと、どこかからまだまだ、って声が聞こえてきそうではあるが。

 でも一年前の私は自分がこんな風になるとは思ってもいなかった。それに車の運転の練習もした。お陰で今は迎えに来てもらわなくても、自分で行けるようになった。と言っても車は父の車であるが。もしゴルフをしなかったら、一生ペーパードライバーで終わっていたかもしれないと思う。

 そして今は、次いつゴルフに行けるのだろうかと、楽しみで仕方がない。

雨の日のゴルフも経験した。ゴルフは少々の雨でも決行になる。 雨天順延とはならない、ゴルフ場がクローズにならない限りキャンセル料がかかるからだ。特に日祝日はキャンセル料が高い、1週間前からキャンセル料五千円くらいとられるところがある。勿体なくて、キャンセルにできない、というのが本音だ。完全キャンセルじゃなくて、延期で別の日を予約するならキャンセル料掛からないというゴルフ場もある。稀に当日キャンセルでもキャンセル料なしのところもあるようではあるが、かなり少ない。

今のところ、私はキャンセルをした事はない。でも雨の日のゴルフは散々だった、午前中はポツポツだったのだが、午後からは本降り、球を打てば水しぶきまで上がるし、全然飛ばない。合羽は来ていたが、下着までずぶ濡れになっていた。でも誰もやめようとは言わなかった。女子ばかりで行っていたからかもしれない。女子はこういうところがめつい。やめたら、お金が勿体ないと思ってしまったのだ。一緒に行ったのは、弘美さんと琴原さんと琴原さんの大学時代の友達の成瀬清美さんという人た。

 弘美さんと琴原さん達は初対面、私も琴原さんの友人とは初対面。でもゴルフって、こういうの全然気にならない、それが今でも不思議に思える。人見知りの筈だったのにと。

 続けるかやめるか、何度か口には出たが、何だかんだ言いながら結局一ラウンド回り切った。さすがに体が冷え切ったので、終わってからのお風呂は体にお湯がしみ込んでくるようだった。

「いや~散々だったね!」

「誰もやめようって言わないんだもん」

「誰か言ったらやめようと思ってたんだけどねー」

湯船に浸かりながら、みんな笑った。その後、みんなで食事に行った。それも楽しかった、会社に入ってからも特に親しいと言えるような友人もいなかったので、会社の行事としての宴会には参加していたが、女子だけで出かけたりという事も無かった。特にそれを寂しいとかも全然思っていなかったのだが、こうしてみんなと一緒に外で食事をするというのも悪くないという事を知った。

「佳奈美ちゃん、上手くなったわね~。一年前とは別人よ」

琴原さんがそう言うと弘美さんも頷いた。

「本当に、去年初めて一緒に行った時とは全然、違う。私、追い抜かれそう」

「そんな事ありません。今日なんて百三十八も叩いちゃったし…」

「今日はみんな悪かったわよ。あの雨じゃあね、私も久々に九十台後半、手は滑るし、ボールは見えないし、グリーンも重いし。あれじゃゴルフにならない」

「九十台後半なら良いじゃない!私百二も叩いちゃったわよ!百オーバーなんて大学卒業して初」

琴原さんの言葉を受けてそう言った成瀬さんが肩を竦めた。私からしたら、あの雨の中でも百前後で回れる二人は凄い、としか言いようがないのだけど。

「でもみんな根性ありますよね。今日は雨予報で結構キャンセルになったみたいなのに。それに午前中五組いたのに、午後から回っていたの私達ともう一組だけでしたよ」

弘美さんがそう言うと今度は成瀬さんが

「それよそれ、もう一組いたから何かやめるの悔しくって!辞めたら負け?みたいな」

と、言った。それに琴原さんがまた同意する。

「あ、分かる分かる!実は私ももう一組が帰ったら、辞めようかと思ってたんだ!」

その言葉に弘美さんも同調する。

「それ、何の勝負ですか!って、私も何となく分かりますけど(笑)」

「また行きましょう、今度は晴れてくれる事を祈って!」

 

本当にゴルフを始めて周りの景色が変わったような気がした。今は月一のペースでラウンドに行ってる。毎月、それがすごく楽しみだ。

 

〇佳奈美の現在の飛距離

・ドライバー 百三十~百五十yd 極々稀に百八十ydくらい飛んでくれる

・スプーン 百十~百三十yd

・バフィー 百~百二十yd

・ユーティリティー百yd前後

・七番アイアン 九十yd前後

・九番アイアン 七十~九十yd

・PW 六十yd前後

・SW 四十~五十yd

一年前と何が変わったかというと、勿論、飛距離も伸びたがウッドの三番を買い足し、クラブが一本増えた。琴原さんと一緒にゴルフショップに行った時に試し打ちしてみたら、これが案外、良い感じに当たってくれたのだ。それで思わず衝動買いしてしまった。それで今は、セカンドはほぼスプーンを使っている。ただ、三回に一回は失敗してゴロになってしまうのではあるが。そしてバフィーは殆ど使わなくなった。

 私は気に入って使っているのだが、スプーン使ってるの?とよく聞かれる。何か変なのだろうか?と思っていたら、どうやら女子で三番ウッドを使ってる人は少ないらしい。

(知らんがな…)

正にそう思った。琴原さんも買うとき、何も言わなかったし、当たれば結構飛んでいる、と私は思っている。それに琴原さんが

「人の意見なんて気にしないで、自分が使い易いと思っているクラブを使えばいいのよ」

と言ってくれたので、気にしない事にした。

 そして私は最近になってゴルフバッグに入れるクラブに制限がある事を知った。

 

・ゴルフバックに入れるクラブの本数は最大十四本まで

・クラブの種類には制限がないので、同じ番手の物を二本入れようと三本入れようと自由

*競技ゴルフでは、十五本以上のクラブでプレーすると一本につき二打のペナルティーが課せられる

 

と、言う事らしい。私は今でパター入れて九本だから、あと四本入れてもOKって事である。しかし、そんなに沢山必要なのだろうか、という気もする。今のままでプレーには全然差し障りはない、でも続けているともっと欲しくなるのかな、なんて思った。

 

 そして最近、やたらと父が一緒にゴルフに行こうと誘ってくる。まだ父とは一緒行った事はない。最初は絶対嫌だと思っていたけど、最近は少し行っても良いかなという気持ちになっている。スコアがちょっとましになったという思いもあるのかも知れない。百五十前後で回っていた時は、絶対父にぼろくそに言われるのは目に見えていると思ったから行きたくなかった。でも私が嫌だと素気無く断ると、父が少し寂しそうな顔をする。その顔を見ると、ちょっと罪悪感を覚えてしまうのだ。

「今度の日曜、凄く天気良さそうだぞ。一緒にゴルフでも行くか?」

「まあ…言っても良いけど」

「え?ほ、ホントか!」

(ゲッ!)

父の顔が今にも泣きそうなくらい喜んでいる。そんな大袈裟な、と思わず思う私。

「その代わり、ゴルフ代は全部お父さんが出してよ」

「出す出す!全部出す!何なら新しいウエアも買ってやる!」

「マジで?」

「マジマジ大マジ!」

「じゃ、行ってあげる」

などと、ちょっと上から目線で答えたが、父は超ご機嫌。何だか単純な人だなあと改めて思った。

(ま、良いか)

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