佳奈美の初めて始めてゴルフ〈初級〉「知らんがな、そんな事」第24話

第24話 初心者と一緒に…

そうしてゴルフ歴四年目になった私、しかしまだ百は切れず未だ百十をウロウロ。。今のベストは百八、弘美さんが言っていた煩悩だ(笑)。

 先日、これまた練習場で知り合った、二十四歳(私より一歳下)の男性と成り行きでラウンドに出る事になった。一緒に行ったのは弘美さんと私とその男性、桑原智之さんの三人。実はこの桑原さん。ゴルフを始めたばかりで、まだラウンドに行った事がないという人。

 会社の人間が結構、やっているが今まであまり興味がなかったそうなのだ。でもみんなが楽しそうにゴルフ談義をしているのを何度も横目で見て少しやってみようかなと思ったらしい。今はまだ会社の人間に内緒でしているそうで、この練習場も会社から遠いから選んだという事らしい。

 見てるとドライバーは結構飛んでいる。やっぱり男の人は良く飛ぶな~と思った。でもなんだかいつ見てもドライバーしか振ってないように思う。他のはクラブは練習しないのですか?と聞いたら、だって、他のクラブは全然飛ばないから面白くないし、と言われた。(ハハ……)

 で、偶々、また一緒になった時に、コーヒー、ご馳走するから休憩しようと言われたので一緒に喫茶ルームへ。

「ところで島村さんはゴルフ歴、どれくらいなの?」

「私、今年で四年目になりました」

「へ~じゃ、スコアは?八十くらい?」

「は?」

どうやったら、その数字が出てくるんだと思った。

「八十なんかで回れるはずないじゃないですか!そんなのメチャメチャ上手い人のスコアです!」

「そうなの?でも何か、数あるじゃん。1ホール四打とか三打とか」

「ああ、パーの数ですか?」

「そうそう、そのパーってやつ。十八ホール回って七十二とか、それが平均値なんだよね?」

「はあ?」

それは誰に教わった定義なのだ?と思わずにはいられない。

「それは各ホールの規定値であって、平均値の事じゃありません」

「ふーん、じゃ、島村さんの一番良いスコアって、幾つなの?」

「私は、百八ですけど…」

「あー、まだそんなもんなんだ!」

そう言った桑原さんの顔は明らかに見下しているように見えた。

(カッキーン)

というナイスショットの音が、ではなく何かがぶち当たる音が私の頭の中で聞こえた。自分でも上手いとは思っていない、確かに中々上達しないという事は分かってる、でも始めたばかりのお前に言われたくはない、という思いが走る。

 で、その話を弘美さんにしたら、是非一緒に行って現実を教えてあげようという事になった。私も消化しなければいけない有休もあったし、桑原さんも仕事の関係でお休みは平日らしい。誘ったら、乗ってきた。弘美さんのベストスコアは今、九十六、それを言ったら帰ってきた言葉が「それって上手いの?」だったそうだ。私と弘美さん、かなりそこそこ気分を害してる。そして初めての人と一緒にラウンド回るなら空いている平日の方が良いと思ったのも確かだ、後ろの人を待たせないよう、最後の時間を選んだ。

 始める前に弘美さんが、ゴルフ場の人にコース出るの初めての人がいるので、ちょっと時間かかるかもしれません、と断っていた。そう言えば、私が初めてコースに出た時、一緒に回った部長もそんな事を言っていた。あの時はよく意味も分からず聞いていたが、こういう事なんだなと改めて思った。

 そうして桑原さんの最初のティショット一打、意気揚々とティグランド立った、桑原さん。実は始めてだから私達と一緒に赤ティから回らないかと弘美さんが提案したが、見事に却下。まあ、ドライバーは確かに飛んでいたから、自信があるのだろうと思った。でも残念な事に一打目、二打目と空振り、三打目でようやく当たったが赤ティにも届いていなかった。

 戻ってきた桑原さんはそのままカートに乗り込む。私と弘美さん、思わず「え?」と顔を見合わせる。

「おっかしいな~今日は調子が悪いのかな~」

と腰を掛けて首を捻る桑原さん。

(知らんがな、そんな事…)

 おいおいそんな事言ってる場合じゃないだろ、すぐにクラブ持ってボールが落ちた場所に行けよ、と思うが変にプライド高そうな彼に私達二人はただ苦笑い。

「あ、あの、桑原さん、ボールそこだから、次のクラブ持ってそこに行かなければ!」

何とか笑いながら指摘する弘美さん。

「え?もう打つの?」

と、不思議そうに返す桑原さん。

(だってそこじゃん、ボール)

と私は心の中だけで呟く。しかもかなり安定感の悪い斜面にあるボール。大丈夫なのかなと思っていたら、案の定、ゴロだった。結局私達が打つ赤ティに辿り着くまでに五打くらい打っていたように見える。

「中々に…」。

と呟く弘美さんに頷く私。その後に続く言葉は想像できる。初めてだからしょうがない、私も初めてラウンドに出た時はこんなものだった、とは思いつつも謙虚さのない桑原さんの態度に、ため息の出る私達。

 午前のハーフを終えるのに三時間以上かかった。昼食に入る前に「この調子だと日没に間に合わないかも…」と言われてしまった。でも当の桑原さんは自分のせいだという意識はまるでないかのようにニコニコしてる。

「午後からはもう少しピッチあげましょうか?」

「そうだね」

と、私達がやんわり言うも桑原さんは分かってない顔。

「え~、それはしんどいなあ。ゆっくりでいいじゃん」

私の中でブチブチと何かが切れる音がする。

「どうせ、後ろいないんだから良いんじゃないの?デートの約束でもあるんですか?」

ここで弘美さんの表情にピキピキと走るものが見えた。

「あのねー、ハーフは普通どこも二時間十五分以内、後ろがいるとかいないとか関係ない。一打目打って、飛んでなかったらいちいちカートに乗らず、クラブ持って、自分の打ったボールまで走れ!カートに乗るのは十年早いわ!三人だったら普通二時間で回るわ!」

とのたまった。

(弘美さん。ありがと!パチパチパチ)

と、私が言えなかった事を言ってくれた弘美さんに心の中で手を合わす私。それに対して桑原さんは目をパチクリ。

「え…?」

「下手くそなのは仕方がない!初めてなんだから、でも甘えるな!」

と、とどめの一発。

「下手くそ…?」

でも不思議そうにその言葉を呟く桑原さん。

(え?思ってないのか?)

だって、午前中ハーフ八十近く打っていたのに?空振り入れてたらもっといってたはず。ハーフ三十六が当り前みたいな事を口走っていたくせに!と私、心の声。

 でもまあ、午後からは弘美さんが睨み?を利かせてくれていたのでカートには殆ど乗らずクラブを持って走っていた。やっぱり、こういう事を言ってくれる人って必要だと感心する私。お陰で午後からは何とか二時間半で回れた。

 だらだら回っていたのと、桑原さんの打った球探しで私達は調子が狂い、弘美さん、百五、私、百十二という結果でベスト更新ならずだった。

 でも初めての人と回るってこんなに疲れるんだという事を知った。私も初めての時は木下さんと部長に気を遣わせたんだろうなと改めて思った出来事だった。

 そして桑原さんはこれにめげるかと思いきや、以外にもレッスンを受けて本格的に頑張り始めた。もしかして悔しかったのかなと思った。

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