佳奈美の初めて始めてゴルフ〈初級〉「知らんがな、そんな事」第25話

第25話 百の壁

そしてゴルフを始めて五年が過ぎた。しかし未だに百切出来ていない私。百の壁は厚い、という事を痛感している。 でも(知らんがな、そんな事)を呟く事はかなり減った。

 前回行った時は、ちょっと期待した場面があった。前半ハーフ五十三で回り、後半ハーフ八ホール目までの成績が快調に進み四十二、最後のホールはショートホール。もしパーで上がれれば九十八。なんて頭の中で計算していた。だが何と一打目で、目の前の池にボールが吸い込まれて行き、いきなり三打目になった。でも距離は百ydほど、一オンしてパター一打で済ませればまだ可能性がある。なんて思ったのがいけなかったのだろう、グリーン手前のバンカーの壁に球は激突。

(あ~ぁ……)

この九十度くらいあるんじゃないの?と思うような壁を叩く事二打、三打目でようやく上に上がったがバンカーの淵にギリギリ引っ掛かってるような場所。まともに立つ事も出来ない、勢いで打ったら、グリーンを超えて行った。何とか一パットで入ったものの八オンとなった。結局ショートホールで九打も叩くという有様。なので後半スコア五十一になり、結局百四。

 こんな風に、もしかして?と思うシーンは何度かあったが、ベスト百三止まり。あとちょっと、というところでどうしても百切れないでいるのだ。弘美さんや、留美さんはもう何度も百を切っている、というか弘美さんは今、九十台半ばをウロウロしていて、九十に辿り着かないとこぼしている。留美さんは九十代前半をキープ。こちらも九十切れないとぼやいている。

 みんな一気に上達とはいかないのだ。それでも私は取り敢えず二ケタ台になりたい。毎回必ずそうなれるわけでもないと思うが、兎に角百切したい!という思いがい日に日に強くなる。

 サイトには百を切るには?とか百を切るためみたいなタイトルのサイトが山程ある。でもそれを見ても簡単には百切り出来ない。それでもついつい見てしまう、そして納得したり、しなかったりだ。

 でもゴルフを始めたばかりの時は、百切出来るかどうか、なんて悩む日なんて来るのだろうかと思っていたくらいだから、かなりの進歩だとも言える。こんなに続けるなんて正直意外だ。それなのに最近は練習場に行く事がめっきり減った。上手い人ほど練習熱心というのはどうやら本当のようだ。中本さんなんて、週三回くらい行ってると言っていた。あんなに上手いのに、と思ってしまう。

 私は今、練習場に行くのは平均月二回程だ。これじゃ上手くならないだろうとも思うが、やはり元々外に出るのが好きではないという傾向があるから、段々と練習場に足を運ぶというのが面倒になってきているのだ。それでも、その思いを奮い立たせて、月二回くらいは頑張って練習するようにはしている。

 そうして久々に木下さんと部長と詩織さんとでコースに出る事になった。部長とは三度目のラウンド。前回は二年前、あの頃は百二十前後をウロウロしていた。今でもちょっとミスるとすぐそれ位打ってしまうから、部長の目から見たら、進歩ないなと思われるかもしれない。そうならないよう頑張ろうと思う。

「おはようございます、部長。今日はよろしくお願いします」

「おはよう、随分上手くなったそうだね」

「いえ。未だに百二十叩いちゃう事、しょっちゅうなんで」

「そういうもんだよ」

木下さんの奥さんの留美さんは、もうじき臨月を迎える。しばらくゴルフがお預けで悲しいと言っていた。でもとても幸せそうだ。

「琴原君は相当旨いそうだね。大学時代からやっていたって?」

「はい」

詩織さんは今まで、会社の男性陣とは一緒に行かなかったので、部長達と回るのは初めてだ。どうして今回は一緒に行ってもいいと思ったのかは分からない。どうせ行かないだろうなと思いながら誘ったら、「言ってみようかな」と返ってきた。どういう心境の変化なのだろうと思った。ゴルフをやっている事すら言ってなかったので、私が実は凄く上手いと言ったら驚いていた。でも話を聞いて部長が闘志を燃やしているようだと木下さんが笑っていた。

 そうしてティショット。何と快心の当たり、百八十ydくらい飛んでくれた。

「ナイスショット!」

「ありがとうございます!」

「これは驚いた、前の時とは格段に変わったね」

部長にもそう言われ、テンションが上がる。第一打目が上手く打てるとかなり嬉しい。そしてセカンドショット、これも奇麗に当たった。ピンまであと、百ydくらいの位置に飛んでる。

 三オン一パット、何とパーで上がれた。

(幸先いい!)

何て調子に乗っていたら、また失敗する。気を引き締めなくてはと思いながら次のホールへ。第二ホールはダボで六打だった。何となく、調子が良い気がすると思いながら慎重にプレイを進めてハーフ五十で上がれた。

 部長は四十二、木下さん、四十七、詩織さんはなんと三十八、ダントツトップだ。

「これは負けてられないな」

と言いながら、部長は嬉しそうだ。

「俺も、うかうかしていたら島村さんに追い抜かれそうだ」

なんて木下さんはそんな事を言ったが、絶対私なんかには追い付かれないと思っているのが分かる。それをちょっと悔しいと思っている私がいる。

 そうしたら後半第一ショットで木下さんがOBを出した。悔しがる木下さんを尻目に私のショットは奇麗に飛んだ。

(やった!)

と心の中で小躍りしている。なんか性格悪くなった?なんて少し思う。人に勝ちたいとか、誰かと勝負するなんて事、ゴルフを始めるまで思った事も無かったのに、最近は、少しそんな感情を持つようになった。

 しかし十三ホールで、バンカーからバンカーという失態をして、ミドルで九打も叩いてしまった。やっぱダメかと思いながらプレイを進めていたがその後続けてボギーが出た。

・十一ホール(ミドル)六打

・十二ホール(ロング)八打

・十三ホールミ(ドル)九打

・十四ホール(ショート)四打

・十五ホール(ミドル)五打

・十六ホール(ロング)七打

・十七ホール(ミドル)六打ホール

 

そうして残すところあと一ホール、十八ホール目ショート。ワンオンはしなかったが二打目でオン。

(これが入れば…)

そう思う気持ちが湧くのをなんとか抑えてる。

(ダメダメ、意識したら悪くなる)

そう頭を振ってパターを振る。

「あ…っ」

大振りし過ぎた。カップの横を通り越してもとより遠くなった。

(あ~あ、やっぱダメか…)

なんて思いながら慎重に二打目のパター。

「え…っ」

何とボールは真っすぐにカップに向かって転がっていった。

コロン カップに入る音が耳に響く。

「嘘!?」

思わず声に出た。

「ナイスイン!」

 

・最終十八ホール(ショート)四打 前半ハーフ五十打、後半ハーフ四十九打 スコア九十九。

 

無意識にガッツポーズをしていた。嬉しすぎる、人生でこんなに喜んだ事がないくらいだ。

全員のプレイを終えて、計算する。

「佳奈美ちゃん、九十九!」

「はい!」

「おめでとう百切!」

「ありがとうございます!」

 

部長後半ハーフ四十一スコア計八十三、木下さん四十八計スコア九十五、詩織さん三十九系七十七。結局、今日もビリだった事には違いないが百を切れた事が嬉しすぎて、そんな事はどうでも良くなった。

 

 島村佳奈美 二十六歳。ゴルフ歴五年、ベストスコア九十九。

 

まだまだ頑張る。目指せ、記録更新!

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